群馬大学卒業。群馬大学医学部付属病院、山梨県立中央病院などでの勤務を経て、1984年山梨医科大学脳神経外科学助教授。1991年に那須脳神経外科病院（現 那須北病院）を開設、病院長。2021年4月より名誉院長に就任し、現在に至る。

▼目次
30年の歩み
この土地を選んだ理由
「優しさの医療」を目指して
これからの那須北病院

30年の歩み

― “医療空白地帯”栃木県北エリアでの挑戦

栃木県でも自然に恵まれた那須の地に、1991年に那須脳神経外科病院（現 那須北病院）を開設して30年が経ちました。
病院を開設するにあたって「人材」は欠かせないわけですが、私は当然この那須の地にも正看護学校があると信じ込んでいました。ところが、開設当時は正看護師の養成校は近隣にはありませんでした。1995年にようやく国際医療福祉大学ができましたが、看護師や技師といった医療専門職が養成・輩出されるようになるまでに、開院から約10年ほどがかかりました。
そのような人材を集めるのに大変苦労するこの県北エリア・那須の地に脳疾患を専門とした病院を開設した理由は、ここが医療空白地帯であったからです。例えば脳卒中死亡率を見ても、当時の県北エリアは非常に高い死亡率でした。

那須脳神経外科病院（現 那須北病院）では、県北エリアにおいて先駆けてCT・MRIを導入しました。そして検査をしていくと、脳動脈瘤や血管が詰まっているケースが多く見つかりました。脳動脈瘤は、くも膜下出血を引き起こす原因ですので、検査を受けられた患者さんやそのご家族に説明をするのですが、多くの方が「くも膜下出血」と聞いて大変ショックを受けておられました。それまでこの地域では適切な予防・治療が行われていなかったため、くも膜下出血はかなり厳しい病気だと、ほとんどの方が亡くなってしまう病気だと皆さん捉えておられました。そういった医療空白地帯において、脳疾患を専門とした地域の中核病院として、MRAによる検査・早期発見の推進、大きな動脈瘤の手術・治療、そして再発を抑えるための食生活の指導などに取り組んでまいりました。

人も道具も少ない中でも当院がこの地域とともに歩んできた３０年間の成果として、この地域の脳卒中死亡率の改善にも貢献してきたと思っています。

この土地を選んだ理由

― 都会にはない緑豊かな景色も、この病院の魅力の一つ

この土地を選んだ決め手は、病院周辺の緑豊かな環境です。都会にはないここの景色を、私は一発で気に入りました。病院周辺の緑はクヌギ林、広葉樹です。広葉樹は四季折々の顔があります。この緑を眺めているだけで、患者さんの病気が治るのではないか。それくらいの気持ちで、この土地に那須脳神経外科病院（現 那須北病院）を開設しました。
こんな田舎に病院を作って大丈夫かと、周りからも随分言われました。最初のうちはどこから患者さんが来てくれるだろうと心配していましたが、この地域に欠けていた脳疾患専門の病院ということで受け入れていただけた。今では、宇都宮の方から通っていただく患者さんもいるほどです。

「優しさの医療」を目指して

― 「優しさの医療」に込めた思い

職員には患者さん・ご家族のそばで、話に耳を傾けてほしいと考えています。
受付をして、検査を受け、診察を受け、会計へと回っていく。スムーズに効率化されることは良いことではありますが、患者さん・ご家族にとって医師やスタッフの顔が見えない病院ではいけないと思います。１００床ほどの小さな病院である私たちは、医師も看護師もリハビリもその他コメディカルスタッフも患者さんやご家族にとって「顔が見える、より身近な存在」であり続けてほしい。いつでもなんでも相談しやすい病院でありたいと考えています。

これからの那須北病院

― 地域、ご自宅への復帰につなげる役割を強化

昔に比べると、栃木県北エリアの大きな病院で脳外科を診るところが揃ってきました。そして、国も地域包括ケアシステムを推進し、機能分化や入院期間の短縮を推し進めています。時代が変化する中で、当院が担うべき役割も少しずつ変わってきています。
これまで通り、県北エリアの脳疾患医療を支えつつ、大きな病院で急性期治療を終えられた患者さんが地域・ご自宅に帰って行かれるための充実したリハビリテーションの提供、地域の医療・介護施設とのシームレスな連携といった後方支援病院の役割も担っていかなければいけません。

これからも地域の方々、患者さん・ご家族の話に耳を傾け、優しさの医療を提供しつづけていきましょう。

（写真・インタビュー・文：MottoBrand 福井勝雄）

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