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自由にアイデアを考え実践できる環境で、言語聴覚士の私だからできること

言語聴覚士 大山さん | 好きな言葉「不自由である事と不幸である事はイコールじゃない」

宮城県から言語聴覚士になるために栃木県の大学へ進学した大山さん。そんな彼女の原点は、小さい頃の自身の入院体験がありました。患者さんの気持ちに寄り添い、前向きにリハビリに臨める環境づくりをとても大切にする彼女に、那須北病院(旧 那須脳神経外科病院)で働く魅力、今後の目標などお話をうかがいます。

▼目次
言語聴覚士としての歩み
セラピストが活躍できる環境
当院で経験できること
私が目指すセラピスト像

言語聴覚士としての歩み

言語聴覚士を目指す原点

私がセラピストを目指したのは、自身の入院中の経験がきっかけです。一人で不安だった長い入院生活を振り返った時に、毎日決まった時間に決められた時間リハビリの訓練を共にするセラピストの方との時間はとても楽しい思い出として残っています。リハビリの時間というのは一対一で他の人にも干渉されず、毎日連続した会話ができました。私にとっては「昨日はこんなことを話したな、明日は何を話そうかな」という風に思える、すごく楽しい時間でした。そうした自身の経験がきっかけで、「私も患者さんの心に寄り添える存在になりたい」と考え、セラピストの仕事を目指すことにしました。

― 那須北病院を選んだ理由

高校3年生までは言語聴覚士という資格すら知りませんでした。実際に職業体験に行って、その時はじめて失語症という病気・障害があることを知りました。普通に日々楽しく喋ることが難しくなってしまう人もいるんだと知り、そういった障害に対するリハビリを行う言語聴覚士に興味を持つようになりました。言語聴覚士を目指すにあたり、カリキュラムや先生が整っているところで勉強したかったため、宮城県から栃木県内の大学に進学しました。

実習で那須北病院(旧 那須脳神経外科病院)は来ていて、その時の空気がすごく和やかでした。スタッフ同士仲が良く、誰が先輩で誰が後輩なのかわからないぐらい(笑)。良い意味で、喋りたいことを喋って、好きなときに討論して、いろんなアイデアを出し合って実際に試してみたり。そういった自由な環境がすごく居心地が良くて、「私もここに就職したら、わからないことがあってもきっと遠慮なく相談できそうだな」という安心感がありました。

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セラピストが活躍できる環境

言語聴覚士が活躍できる環境

言語聴覚士の仕事は、基本的に首から上のリハビリと言われます。飲み込む、話す、頭で考える、耳で聞く、これらは脳神経につながる分野です。那須北病院は成人領域で、失語症や注意障害等を含む高次脳機能障害、嚥下機能障害、構音障害のリハビリがメインです。

例えば、脳梗塞の患者さんでは顔面や舌が麻痺して動かなくなってしまい、うまく発音ができなかったり、食べ物がうまく飲み込めなくなってしまう方が多くおられます。そういった方に対して、喉のマッサージや筋肉の増強の訓練、嚥下のリハビリを行います。また脳梗塞で失語症になってしまった方には、絵カードなどを使いながら、言葉を出す練習を行います。失語症は言葉を話すだけではなく聞いて理解するのが難しくなってしまうこともあります。文字が書けない読めない、計算ができないといった症状もあり、人によって障害が異なります。患者さんがまずは何ができて、何ができないのかをしっかり検査して、その人に必要なリハビリを計画していきます。

― リハビリの成果を実感できる

脳梗塞になってしまって普通に食べ物が食べれなくなってしまった患者さんが、最初はゼリーひと口から一緒にリハビリをしていき、退院するときにはお肉やお魚といった普通のご飯を食べられるようになったときはすごく嬉しく思います。人間にとって食べることは生きていく活力だと思うので、退院後も家で問題なく食べられているというのを聞くと、セラピストとして十分に貢献できたんだなと実感します。

失語症の患者さんの場合は、最初は話しかけても全然理解してもらえなかったり、言葉が出てもこちらがよく聞き取れなかったりもします。そのような状態からスタートしてリハビリを重ねていくうちにやりとりができるようになり、患者さんの笑顔が見られるようになった時は、自分を信頼してくれていること、そしてその方の能力を引き出せたことにすごく喜びを感じます。

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当院で経験できること

自由にアイデアを試すことができる

那須北病院のリハビリテーション部の先輩たちを見ていると、自分のアイディアで色々なものを揃えて、試している姿を見ることができます。そういったのを見ていると、やっぱり自分も色々チャレンジしたくなります。他のリハビリスタッフもみんな探究心があり、「こういうことを試そうと思ってる」と話し合っているのが聞こえてくる。私も実際に自分でリハビリの教材を作ったりして、周りのスタッフに見てもらうと「それいいね!」とポジティブな反応を返してくれます。そんな環境なので、自分でアイデアを考えてカタチにする時間もすごく楽しく感じられます。向上心の高いスタッフが多く、私もそういった雰囲気の中で型にとらわれないやり方でアイデアを出しながら成長していければと考えています。

― 急性期から回復期そして退院まで関われる

病気の発症初期から退院するまで長期間に渡って担当できるというのがここの病院の魅力です。他の病院だと急性期病棟で2~3週間リハビリを頑張っても、回復期病棟に移ったらスタッフが変わってしまって一から信頼関係を作り直す必要があります。患者さんにとっても、また検査をし直して、以前の病棟で話したことをもう一度聞かれて、ストレスに感じてしまうこともあるのかなと思います。那須北病院では、長い患者さんだと半年以上関わり続けることができるため、その時々に適した治療を実践し、なおかつその成果を見ていくことができるので、非常にやりがいのある環境だと感じています

私が目指すセラピスト像

― 大切にしたい考え方

「患者さんのペースに合わせる」ということを、私は大切にしたいと考えています。リハビリの担当になったから「明日から一生懸命頑張りましょう」ではなくて、まずは本人の気持ち、これからどうしたいのか、患者さんの気持ちを第一優先に考えたい。やりたくないのに無理にやる必要はないと私は思っています。やりたくないときは1日くらい休んだっていいと思います。目標を達成するためのリハビリを強要するようになったら駄目かなと。それよりは、本人の気持ちが前に向くように患者さんの気持ちをしっかり聞いて寄り添ってあげる「リハビリの環境作り」がとても大切だと思います。

私が小さい頃に担当してもらった理学療法士さんは、すごく笑顔が素敵で話を引き出すのが上手で、歩くリハビリをしていたのですが、それよりも一緒に話をして楽しかった思い出の方が残っています。誰が来てもリハビリはできるけれども、やっぱり信頼関係を築いたスタッフが来ると患者さんも嬉しい気持ちになるし、そういうふうに思ってもらって仕事をすることは大切だと感じています。

― 安心できる存在になってあげたい

患者さんの気持ちがうまくリハビリに向かないときでも、まずは心を癒やしてあげて、信頼関係を築いていく。はじめは「帰っていいよ」「他の患者さんのところに行ってきていいよ」とリハビリに消極的な患者さんに対しても「少しでもお話しましょう」と毎日声をかけに行って、3分5分と少しずつ時間を伸ばしていく。そのうちに「なんで今日は来ないの?」「明日休みなのか、残念だな」と言ってくださるようになります。私も長く入院をしていたことがあり、患者さんの不安な気持ち、寂しい気持ちは経験したことがあります。患者さんにとって病院が少しでも癒しの環境になれば、長いリハビリも前向きに頑張れるようになると思う。私が少しでも患者さんの話を聞いてあげて、信頼関係を築いて、患者さんにとって安心できる存在になってあげたい。そして、患者さんが笑顔で待ってくれるようになると嬉しく思います。

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― 言語聴覚士だから、できること

言語聴覚士のリハビリは基本的には個室で行うので、患者さんが色々と悩みを打ち明けてくれることがあります。それを私がしっかりと時間をかけて聞いてあげて、看護師さんや他職種のスタッフに伝えることで悩みが解決できれば、「ありがとう。またリハビリ頑張るね」と患者さんが前向きになってくれます。誰にも干渉されないところで、患者さんが思ったことを素直に話せる環境を私が用意してあげる、それでもし私のリハビリ時間が多少減ったとしても、他のスタッフとのリハビリの時間を前向きにしっかり頑張ることができれば、良いと考えています。言語聴覚士だからこそ、できることだと思います。

― これからの目標

脳画像をもっとしっかり見られるように勉強して経験を積んでいきたいと考えています。人の顔と同じように、脳の形も人によって少しずつ違っていて、私自身まだまだ得意とは言えません。将来的には、脳画像を見ただけでもリハビリのプログラムを組めるくらいになれれば、言語聴覚士として一人前になれると思います。
他にも、那須北病院では今後、内視鏡を使ってVE検査による嚥下機能評価ができるようになります。飲み込んだときの喉の映像を医師と一緒に見ながら、舌や喉の動きを確認しながらリハビリを実施・評価することができるようになります。

多職種とも連携をしながら、私自身より多くの症例でのリハビリ経験を増やしていき、プログラムを考える時の引き出しをもっともっと増やしていけたらと考えています。

(写真・インタビュー・文:MottoBrand 福井勝雄)

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